一日に〇時間しか鳴ってない状態が欲しかった。鳴っていて、どうにかなるということは、なかった。これ、他人には絶対にわからないのだろうけど、日常の感覚として、どうしても、無理だった。どうしても、抜けなかった。
どうしても、ヘビメタが鳴っている状態で、うまくやることができなかった。どーーしても、どうしても、どうしても、どうしても、できなかった。うまくやるって、普通にやるということだから。ヘビメタ騒音がない状態で、どうしても、暮らしたかった。鳴っていて、どうにかなる……ということは、なかった。
この、「鳴っていて、どうにかなるということがない」という絶望が、他の人にはわからない。「そんなの、鳴っているぐらいでなんだ」って言いたくなるだろ。それが、違うんだよ。どうしても、鳴り止んでいなければならなかった。普通に、鳴ってない状態で、暮らさなければならなかった。ヘビメタは、一日中鳴ってない、状態にならなければならなかった。
きちがい兄貴よ、ヘビメタを一日中鳴らさない状態というのは、可能なんだよ。ヘビメタを鳴らすときは必ずヘッドホンをつけるということも可能なんだよ。きちがい兄貴にとって可能なことは、一日中、全部の時間、自分がやりたいように鳴らすということだ。それ以外じゃないのである。
本当に、普通に、ヘビメタ騒音が鳴ってない状態で毎日すごして、それで、女の子に会いたかった。本当に、普通に、ヘビメタ騒音が鳴ってない状態で毎日すごして、それで、受験に望みたかった。試験を受けたかった。自分の人生を切り開きたかった。普通に進学したかった。普通に就職したかった。普通に、恋愛したかった。
兄貴のヘビメタ騒音って、ぼくにとって、「すべて」だから。
すべてなんだよ。あの暮らしが……。あの暮らしがすべてだ。きちがい兄貴が、絶対に一分だって静かにしてくれない暮らしがすべてだ。入試だというのに、きちがい兄貴が、一四時間鳴らせれば、一四時間鳴らし続けて、絶対に一分だって、静かにしてくれないというのが、現実だった。七時間鳴らせるなら七時間だ。
入学試験の前の冬休み……おまえ、きちがい兄貴、一日に一四時間鳴らして、絶対に、一三時間にしてくれなかった。一時間、鳴らさないで我慢するということが、当時のきちがい兄貴には、できないことだった。どうしてもできないことだった。……いや、もちろんやろうと思えば、できるのだけど、絶対にやろうと思わなかった。
どれだけ、こっちが真剣に頼んでも、怒って怒鳴り込んでも、冷静に話し合おうと家族会議を開いても、絶対に、一時間だって、本当には静かにしなかった……これが、現実なんだよ。これが、本当の話。きちがい兄貴が、どれだけ、「静かにしてやった」「そんなの知らなかった」といっても、きちがい兄貴の当時の態度というのは、こういう態度だ。
それも、試験前の冬休みだけそうだってわけじゃなくて、何年間も毎日、ずっと同じ態度なんだよ。きちがい兄貴が鳴らさないで静かにしようと思えば、ならなさいで静かにすることができた。
できるんだよ。
実際、いま住んでいる家でやっているだろ。それが、一分間、鳴らさないで静かにしてやるということができない。絶対にやりたくないから、しない。どれだけ頼まれても、どれだけ怒鳴り込まれても、一分間、自分がぁぁぁぁ!!鳴らさないで静かにするということは、絶対にやりたくないから、入試前だろうがなんだろうが、やってやらなかったことなんだよ。
たとえ、一分間だろうがな。これ、一分間も静かにしてくれない」と文句を言えば、「そんなら、一分間、静かにしてやるから、そのあと絶対に文句を言ってくるな」という態度だったんだよ。そういうふうに言ってたんだよ。俺が中学の時、そういうふうに言っていた。
これ、一分間静かにしたしても、二分間、のばせば、それで、一分間、長くやることができるという状態なんだよ。「一分間静かにしてやれば、あとはずっと、鳴らすけど、……静かにしてやったんだから!!!文句を言ってくるな!!」……こういう態度だよ。
最初の日から、毎日毎日、一五年目まで、ずっと同じ態度。きちがい兄貴が一五歳から、三〇歳までの一五年間ずっと、同じ態度。あとは、むっすり、無視して、すぐに自分の部屋に入って、自分が眠るまで、鳴らすという状態だった。休みの日は、起きたときからだ。起きて、ご飯を食べて、鳴らされる状態になったら、鳴らして、夜まで、絶対に一分だってゆずってくれなかった。
これが、普段のきちがい兄貴の態度なのである。……それで!!「静かにしてやった」「そんなの知らなかった」「俺にも言い分がある」と、嫁さんの前で言っている。……こういうやつなんだよ。
全部同じ。全部!!!同じ!!!そういう態度で、鳴らしているときは、鳴らしてたんだよ!!! きちがい兄貴がこだわってこだわって、意地になって意地になってやったことなのに……こだわり抜いてやったことなのに、「そんなの、知らなかった」「そんなんじゃない」「できるだけ静かにしてやった」ということになってしまう。
これは、親父と同じ。これも、親父と同じ。嘘なんだけど、本人が嘘だと思ってない。どれだけの意地で、鳴らしてたと思っているんだよ。どれだけ、「やめてくれ」と言われたと思っているんだよ。俺がどれだけ、怒鳴り込んだと思っているんだよ? 「知らない」わけ、ないだろ。全部同じ。そういう態度で鳴らしてた。
これ、「兄貴の騒音のせいだ。兄貴のせいだ」と言っても、失敗したら、失敗したで、どうしても、いいわけに聞こえる。そういうことで、はさまれて、どれだけ俺が苦労したと思っているんだよ。
本当に、兄貴、おまえのせいで、毎日が「ハンダゴテ事件」だ。
おまえが、意地になって、絶対に認めないで鳴らしているのに、俺が、言わないからダメなんだと……まわりの人から、決め付けられて生きているような日々だ。
だいたい、関係がない人にとっては、「鳴っている」と言っても、わからない。通じない。きちがい兄貴の、きちがい的な意地、きちがい的な態度というのは、「ふつーーー」の人にはわからない。親父の態度が普通の人にはわからないのと同じだ。親父の態度が、普通の人には信じがたいのと同じことだ。普通の人にとって、きちがい兄貴の態度は、理解できない態度なんだよ。信じがたい態度なんだよ。
だから、「そんなのは、お兄さんに言えばいい」「家族会議を開けばいい」と、俺が、ピンチの時に言われてしまう。家族会議を開こうとしても、席に着かないけどな!!! きちがい親父と、きちがい兄貴は、全力で、席に着かない。何年間、俺が言っていると思っているんだよ!! 家族会議家族会議って。……おまえ、きちがい兄貴、無視して鳴らしてただけだろぉ!!!!
そういうふうに、自分のヘビメタに制限がつくようなことは、絶対にやりたくなかったんだよ。わざわざ、自分のヘビメタに制限をつけるために……家族会議に出るということは、できないんだよ。無意識的に、それは知っている。
自分にとってマイナスになること……そういうことは、絶対に、可能性としても排除しておく……これが、きちがい兄貴のヘビメタ騒音に対する態度だ。自分が無制限に!!いまやれているのに、それを制限するための会議に出るわけがないだろ。テーブルにつくわけがないだろ。
もうひとり、うちには、絶対に家族会議に出たくないやつがいて、それが、親父だ! これ、いまになれば、「積極的に注意してた」と、どーーやって、そういう嘘をつくんだ??と言いたくなるような嘘を言っているわけだけど、……当時のきちがい親父は、兄貴の会うのがいやだから、兄貴を避けまくってたんだよ。
きちがい親父にとっても、家族会議は、なるべく、出たくないものなのだよ。なるべくと書いたけど、「なんだろうが」出たくないものなんだよ。で、意地通して、出なかった。どーーしょもなくなって、中学三年の受験の時、一回と高校三年の受験の時一回、テーブルについたけど、きちがい兄貴の顔を見ないで、「静かにしてやれ」とひとこと言っただけだから。
それで、ひとこと!!言ってしまえば、それで、関心が切れている……。これ、本当に、「きちがいというのは、こういうものなのか」というほど、関心が切れている。頭がおかしい。ここが、つながってない。あれだ言っているのに、ぜんぜん気になってないんだよな。