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比較的涼しい。腹も痛くないし、胸も痛くない。いいはず。けど、頭がモヤモヤするな。「時間」を壊された。ヘビメタ騒音障害のなかででかいのは、いくつかあるけど、いままで、説明してこなかったもののひとつに、「時間の破壊」がある。これは、睡眠障害と関係はあるけど、睡眠障害そのものではない。いや、そのものと言っていいのだろうか。自分の時間がもったいないという感覚と、だるいまま、暇なまま時間がすぎてしまうという感覚がある。
ああ、やっぱり、睡眠障害そのものだ。睡眠障害の一部だ。これは、強烈に人間関係に影響を与える。つきあう時間がなくってしまうのである。全部が「あわない時間」になってしまうのである。しかも、鳴らされている限り自分でどうにかするということができない。どれだけどうにかしようとしても、結果として、どうにもできない。そういう焦りやだめさがある。これも、言いがたいな。これを、説明できるほど成長してない。これ、説明できないな。
鳴っていると言えば、鳴っているというそれだけのことなのだけど、一日中鳴らされるということが、連続的な精神、連続的な生命活動に与える影響がでかすぎる。いま、夏休みだから、遅くても、朝の九時一五分から鳴らされているという状態になる。いまの時間……午前一一時五二分……きちがいヘビメタが、人が絶叫する声より何倍もでかい音でキースか鳴ってた。一四時間近くなっているんだよな。それで、「ゆずってやった」「そんなに鳴らしたつもりはない」ということになっているんだからな。じゃあ、午前一一時五二分に「やめてくれ」と言ったら「やめてくれた」のか? そんなの無視して、ずっと鳴らしてんじゃないか。そういうことの積み重ねが、俺の身体をむしばんだんじゃないか。俺の時間感覚をむしばんだんじゃないか。……これ、ほかのひとにはわからない。わかったところで、どうでもいいことだ。「ちゃんとして」「しゃっきりして」「元気出して」と言われるだけだ。けど、苦しい。苦しいから、苦しい。
自分がこだわってこだわって、細部に至るまでこだわって、絶対に譲らなかったことなのに、「ゆずってやったつもり」でいる。頭にくる。全部、そういうカタチでやりまくる。鳴らしまくる。鳴らし終わったら……午後一一時一五分になったら、一日中、静かにしてやったつもりになる。日中、二〇回、三〇回と、「鳴らす」「やめろ」と怒鳴り込まれているのに、一回も怒鳴り込まれたと思わない状態になっている。なにも言われなかった」状態なのである。横の部屋の弟は、一切合切文句を言ってこなかったと思っている状態なのである。毎日リセットだ。だから、本人は一四年間そんな状態で暮らしていても、まるで、「迷惑をかけた」と思ってないのである。そういう状態。そういう人間。
他の人には、これがわからない。言えば、静かにしてくれるものだと思っている。それが常識。「言わなかったおまえが悪い」と言ってくる。自己責任自己責任。頭にくる。