近くの工事がうるさい。騒音のなかで、バッハのゴルトベルク変奏曲を聴いている。騒音と、この曲の組み合わせ……。いろいろなことが頭のなかをよぎる。騒音に対抗するためになにか聴こうと思って、かけた曲なのだけど、とても、とても、なつかしい。あーー。しかし、俺の一生はなんだったんだろう。
ぼくは、もともとは、騒音耐性がとても高いほうなのだけど、きちがい兄貴のヘビメタ騒音七年間で、だめになった。破壊された。ヘビメタ騒音の持続期間が七年ということではなくて、七年で、崩壊したということ。ほんとうに、騒音耐性が破壊された。あの音の持続が、どれだけひどいものか、ほかの人はわかってない。すぐ、そこで鳴っている音なんだぞ。あんなでかい音で、鳴らしているうちなんてない。壁があるから、きちがい兄貴のスピーカーは見えないけど、壁が透明なら、すぐそこにあるスピーカーだ。振動? くるよ。細かい、細かい、振動で、睡眠回路がおかしくなる。耐騒音回路も破壊された。
これ、きちがいヘビメタがなかったら、うるさいとは思うけど、たいして、こたえない音だ。きちがいヘビメタ騒音の十数年があるから、どんな騒音もこたえるようになった。不愉快な記憶がよみがえってしまうのだ。