ヘビメタで、全部ない。恋愛も、友情もない。おもしろくない。全部、ない。
みんな本当に、ひとごとだと思って、勝手なことを言いやがって……。
実際に暮らして見ろ。きちがい家族が、きちがい家族の基準で、きちがい的にでかい音を、きちがい的なことだわりで、いつもいつも鳴らしている。勉強なんてできるわけがないだろ。
それから、何時間もあびせられると、普通に眠れなくなる。
それでも、「眠れると言えば眠れる」とか……。「夜更かしは自己責任」とかと言いやがる。どうしても、遅刻するようになる。
毎日、二時間、三時間しか眠れない状態で、起きて学校に行くということがどれだけつらいか、わかっていない。自分が起きているつもりで起きていたわけではないのだ。
ゲームをやりたくて、午前四時まで起きていたわけではない。
ぜんぜん、ちがう。
ヘビメタがなければ、普通に暮らせていた。普通に、眠って、起きることができた。ヘビメタ騒音が原因なんだよ。
けど、遅刻をすれば、「そんなのは関係がない」「お兄さんに言えばいい」「家族で相談すればいい」と言われておしまいだ。
けっきょく、俺がさぼって遅刻をしていると言うことになる。
だから、そういうことがあった日は、俺が、きちがいヘビメタを爆音で鳴らながらエレキギターを爆音で鳴らしているきちがい兄貴に、こういうことでこまったということを、絶叫して言う。どうして、絶叫して言うかというと、きちがい兄貴が、絶叫している声をかき消してしまうような音で鳴らしているからだ。
絶叫して言わないと、言ったことにならないのだ。普通に言ったら、わからないような音で鳴らしているからだ。
カオ君という兄貴の友達と、兄貴の会話を聞いたのは、カオ君が話すときに、まるで聞こえないので、兄貴が、ボリュームをさげたんだよ。
そして、そのとき、ぼくが、ちょっと用事があって一階に行こうと思って、階段を下りていた。うちのつくりは、ちょっと普通のつくりではない。
階段にいるときは、きちがい兄貴がきちがい的な音で鳴らしていなければ、きちがい兄貴の部屋の会話が聞こえるの。
ともかく、きちがい兄貴は、やめてやるつもりがないんだよ。
もし、しずかにするなら、自分が静かにしてやりたいぶんだけ静かにしてやるという態度だったんだよ。そして、自分は、思いっきり鳴らしたいのだから、しずかにしても、思いっきり鳴らしている状態だった。
きちがい兄貴が、最大限、しずかにしてやったつもりの音でも、ヘビメタ難聴になってしまうような音のでかさなんだよ。
きちがい親父とおなじで、融通が利かない。
一切合切の、融通が利かない。
そして、まったくやったつもりがないんだよ。
これが、ほかの人には、わからない。たぶん、ぼくが説明しても、わからないんじゃないかな。
けど、ほかの人よりも、きちがい兄貴自身がわかっていないわけ。
親父に関しても、親父自身が、ほかの人よりも、わかっていないわけ。
俺が嘘を言っていると思っている人の根拠のひとつに、「そんな音で鳴っていたら、家族がやめさせようとする」というのがある。
それがちがうんだよね。
だから、信じない。
こいつらは、「俺がなんとか障害で嘘を言っている」とか、「なんとか症で嘘を言っているのに嘘を言っているつもりがない人だ」とかと思うわけだよ。こいつらの悪意がある解釈はひどすぎる。
きちがい兄貴やきちがい親父のことがわかっていないだけなのに、こいつらは……。こいつらは……。近所の人も、文句を言いたかったけど、ほとんど我慢してしまったんだよ。
親父が跳ね返した。そして、でかい幼稚園の横だから、騒音耐性が強い人たちばかりだった。ある程度離れた家屋のなかで、きちがい兄貴の音が、どの程度の音で聞こえていたのかは、知らない。
これ、八メートル離れているだけで、ぜんぜんちがうんだよ。ぼくの部屋と、幼稚園の園舎の距離がだいたい八メートルなんだけど、ぜんぜんちがう。ちなみに、八メートルというのは、ぼくの部屋の、幼稚園側のところと、幼稚園の園舎のぼくの部屋側の距離のことだ。
相当に文句を言いたかったのだろうけど、我慢してしまったところがあるのではないかと思う。基本、幼稚園の側が、どばーーっと、幼稚園の土地なんだよ。そして、東側は、家が建っていなかった。空き地だったんだよ。
そして、道路と庭があった。
俺の部屋は、すぐそこに、スピーカーがあるような状態で……外壁を挟んで、一〇メートル以上の空間があるような状態ではないんだよ。
北側の家に関しては、その家の前の道路が、親父の所有なんだよ。だから、文句を言いにくかったのかもしれない。
ともかく、親父はあんまり文句は言われなかった。兄貴は、自分の部屋に閉じこもって、ガンガン鳴らしている最中なので、よその人が(庭に出た)親父に文句を言ったということも、知らないよ。
親父が「人の息子が鳴らしているのになんだ」と怒鳴って、ボンボンゴミもやしをしたので、会話になっていない。
親父は、兄貴に、こういうことがあったということを言わなかった。言うわけがない。
ぜんぜん、気にしていない。親父が、ほんとうに普通の人じゃないんだよ。
けど、そのとき以外のことでも、近所の人が文句を言いたかったということは確認してある。
あとは、当時を知る人は、わずかな例外のをぞいて、みんな、引っ越してしまった。西側の人のうちはむかしからあって、そこにむかしから住んでいた人は、知っている。
けど、二世帯、三世帯住宅で、当時の状態を知らない人が、新しくやってきて、住んでいるのである。
ともかく、きちがい兄貴は、ほんとうにまったく気にしていなかった。きちがいなんだね。俺のことは、気にしないんだよ。きちがい親父とおなじなんだよ。
でっ、そういうところが、ほかの人にとって「おかしい」と感じる部分なんだよ。
「エイリが話していることはおかしい」と感じる部分なんだよ。
だから、常識的な人は、「そんなことは、あるはずがない」と思って、「エイリが嘘をついている」と思うわけ。
おかあさんは、よその人との交流がなくて、よその人に相談するとか、市役所に相談するということはなかった。おかあさんは、「こまった。こまった」と言って、布団をかぶって寝ていた。
おかあさんの部屋のほうが、ぼくの部屋よりも、しずかなんだよ。
これ、だいぶちがうんだよね。うるさいけどさ。おかあさんの部屋なら、眠れるんだよ。
真横なのか、斜め下なのかで、音の伝わり方が、だいぶ、ちがう。それから、おかあさんは左の耳の感度が普通の人よりも低い。右耳を下にして横になっているときは、多少、音が聴きにくくなる。
ともかく、近所の家のなかで、きちがい兄貴の音が、どの程度の音で聞こえていたのかは、知らないけど、俺の部屋では、兄貴のスピーカーの音が、めちゃくちゃにでかい音で聞こえるんだよ。
近所の人が、けっこう我慢してしまったんだよなぁ。
あとは、親父の関係があるんじゃないかなと思ってる。
* * *
ともかく、全部ない。きちがいヘビメタで、友情も恋愛もなくなった。普通の体力も、普通の睡眠力もなくなった。普通に勉強できる時間も、なくなった。全部、ない。
ヘビメタ騒音で体力がない状態で仕事の面接に行ったらどうなる?
ヘビメタ騒音のことをはっきりと言って、体力に自信がないから、通勤できるかどうかわからないと言ったら、どうなる?
「元気になってから、きてください」と言われておしまいだろ。
実際そういうことがあった。
そして、たとえば、ヘビメタ騒音で体力がない状態で仕事の面接に行って、ヘビメタ騒音のことを隠した場合はどうなるかというと、受かる場合がある。
けど、ヘビメタ騒音で体力がない状態は、かわらないのだ。
俺が、めちゃくちゃに、くるしむことになる。
けど、そのときですら、うちに帰ったら、きちがいヘビメタが鳴っている状態だった。眠れな状態なのである。
そして、土曜日と日曜日は、一日に一三(じゅうさん)時間以上、鳴っている状態だった。一三(じゅうさん)時間と一五分鳴らせるなら、きちがい的な意地で一三(じゅうさん)時間と一五分、鳴らすのが、きちがい兄貴だ。
毎日、鳴らせる時間は、すべての時間、容赦なく、全力で鳴らしていたのが、きちがい兄貴だ。
これ、五分でも、一分でも静かにさせようとしたら、殺さなければならないのだ。殺さなければ、一分間だけだって、静かにさせることができない。
そりゃ、きちがい兄貴の都合で、きちがいヘビメタ道具のまえを離れるときは別だよ。
けど、その時間は短い。たとえば、風呂に入っている時間は一〇分間、飯を食っている時間も一〇分間だ。合計二〇分間はしずかになるけど、ほかの時間は、全部、鳴っている状態だ。
こんなのが、毎日、繰り返されていいわけがないだろ。
そりゃ、死にたくもなる。そりゃ、めちゃくちゃに、腹が立つ。そりゃ、めちゃくちゃに、むなしい気分になる。そりゃ、めちゃくちゃに憂鬱になる。
俺が、どれだけ我慢して、張り切って、ほかの人と付き合っていたと思っているんだ?
なにが「そんなの関係ない」だ!!!
なにが「鳴り終わったら関係がない」だ!!
なにが「俺だって苦労した」だ!!
なにが「俺だって騒音ぐらいあった」だ!!!!
ふざけるな!!!!!