電車で旅をしているとき、自分が乗っているA路線の電車がとまって、復旧まで時間がかかるということを、車掌さんから、聞いたとする。
「B路線の電車に乗り換えたほうが、目的の駅に早くつけるだろう」と車掌さんが言ったとする。
電車で旅をしているのはCさんだとする。
Cさんは、普段「言ったことが現実化する」「思いが現実化する」「過去も未来もない」「今現在しかない」ということを言っている人だとする。
Cさんは、車掌さんのが言うように、B路線に乗り換えたほうがいいと判断して、B路線の電車を待つことにした。
この場合、Cさんは、言わなかったことが現実化したということに気がついていない。思わなかったことが現実化したということに気つがついていない。
「過去も未来もない」のに、未来のことを考えて、自分の行動を選択したということに気がつかない。
過去においてA路線の不具合が発生したから……「今現在の自分」が、未来について考えて、決定をしたということに気がつかない。
「過去がない」のであれば、過去のある時点でしょうじたA路線の不具合は「現在の状態」に関係がないものになるのである。
ところが、過去のある時点でしょうじたA路線の不具合の結果、Cさんが乗っている電車が止まったのである。当然、Cさんは影響をうけている。
「過去がない」のであれば、Cさんは影響をうけていない。
「過去が人間の記憶の中にしかないもの」なのであれば、Cさんは影響をうけていない。
「過去は現在に影響をあたえない」というような言い方はまちがっている。過去の出来事が、現在の状態に影響をあたえているからだ。
「過去は関係がない」といういような言い方もまちがっている。
過去の出来事が、現在の状態に影響をあたえているからだ。
過去の出来事によって、Cさんが、行動をかえたのだ。
これは、とりもなおさず、Cさんが「過去の出来事」の影響をうけたということだ。過去は関係があるということだ。
* * *
そして、Cさんが言霊主義者なら、言うだけで、A路線の電車を復旧させることができるのである。Cさんが言霊主義者なら、A路線の状態を……言霊の力!!で、もとの状態に回復することができるのだ。
もちろん、言うだけで、回復してしまう。
ともかく、「言えば言った通りになる」「言えば、言ったことが現実化する」ということが正しいのであれば、A路線の電車の問題を、すぐに、なおすことができるのである。
原因に関しては、電車自体の問題と、線路の問題に分類することができる。両方の場合において、「言えば、言った通りになる」のだから、言えば解決してしまうのである。
けど、Cさんは「言って解決する」ことを選ばずに……現実的な行動をするのである。
どうして、現実的な行動をすることに抵抗がないかというと、じつは、言霊主義者であるCさんも、言霊の力なんてまったく信じていないからなのである。
だいたい、車掌さんが言うまで、知らなかったのである。
ようするに、すくなくても、Cさんは「電車が止まったままになる」ということは言ってないのである。
言ってないのに、現実化したのである。
そして、Cさんは、言霊主義者なのに「それ」をなんの抵抗もなく、受け入れているのである。どうしてかというと、Cさんは、「言霊なんてなんの影響もあたえない」と思っているからだ。
Cさんが、B路線の電車に乗り換えたのは、言霊の力で、A路線の問題を解決することができないと思ったからなのである。
「自分が乗っているA路線の電車は、時間通りに動く」と言ったって、時間通りに動かないだろうと思って、B路線の電車に乗り換えたのだ。
「言えば言った通りになる」のであれば、「なおる」と言えば「なおる」のだから、「なおる」と言って、なおしてしまえばいいのである。
普段、Cさんが、どれだけ「言ったことが現実化する」「言霊は絶対だ」と言ってたって、Cさんは、ほんとうは、言霊の力なんて、まっーーったく、信じていないということが、ばれてしまう。
むしろ、「言霊の力はなんてない」と確信しているから、現実的な問題が起こったときには、言霊で解決しようとせずに、現実的な行動を選択するのである。
普段から「言霊は絶対だ」「言ったことが現実化する」と言っているのに、普段から「言霊なんてあるわけがないだろ」「言霊の力なんて、絶対にない」と確信して、行動を選択しているのだ。
言霊主義者自身が、じつは、言霊なんてまったく信じていないのだけど、言霊主義者は、そのことに、気がつかないのだ。絶対に気がつかないようになっている。矛盾は……認識されることがないのである。