「Dさんが『なおる』と言ったにもかかわらず、なおらないということが発生する」……と書いたけど、実際に、なおる場合もあるのだ。
そうすると、言霊主義者であるDさんは「ほら、なおった」「言霊は絶対だ」などと言うのである。
しかし、これも、言霊主義者であるDさんの勘違いなのだ。
たとえば、その機械の一部が、摩擦熱によって、過度に熱くなったとしよう。熱くなった部品が、わずかに膨張して、機械が動かなくなったとしよう。その場合、室内の温度と部品の温度に差があるので、部品の温度がさがる。
そうしたら、部品が膨張するまえの大きさにもどって、うまく、機械が動くようになったのだ。
ようするに、Dさんが「なおる」と言っているあいだに、物理的な変化がしょうじたのである。そして、物理的な変化の結果、なおった。
だから、Dさんの放った「なおる」という言葉に宿ってる言霊は、一切合切関係がないのだ。
もちろん、言霊はないので、宿っていないのだけど、Dさんの世界観だと、宿ってることになっているので、とりあえず、「『なおる』という言葉に宿ってる言霊」という言葉を使った。