働いてないとは言わないで、あのときつきあっておけばよかったなぁ。あのとき、バイトはしてたんだしな。けど、ヘビメタ騒音でボロボロになっていて、将来的に働いて養うことができないということを、言いたくなかったんだよな。男の責任は果たせないということを、言いたくなかった。けど、そんなことは考えないで、適当につきあっておけばよかったんだ。
だいたい、「相手にしなかった」というのは失礼だろ。
相手は、そう思うだろ。ヘビメタ騒音でボロボロだから、結婚とかそういうことを考えてもらうとこまるというのが、本音だった。だったら、最初からつれない態度でなんとか危機を乗り切ろうというような気分になっても不思議じゃない。ヘビメタ騒音のことを言うのは、危機なんだよ。じつは、アルバイトだというのは、危機なんだよ。じつは、そのアルバイトも続きそうにないということを言うのは、危機なんだよ。実際、そのあとのことなんだけど、週に三回、一日五時間ぐらいのバイトも、続かなかった。
「ばかにした」とか言われた。してないんだけどな。もっと、気楽でよかったんだよ。ストライクゾーンが小さすぎる。それから、楽しめない体になっていた。楽しめない心になっていた。
その子が、駄菓子屋に入ろうとしたんだよ。大人なんだけどさ。で、俺が元気なときだったら、一緒に入って「おっ、これはなつかしい」とか言って、わりと楽しむことができたんだよ。
けど、長期騒音でボロボロだから、これも、まったく関心がない状態で、入りたくないようなそぶりをしたから、入らなかった。あれ、長期騒音にやられてなかったら、ちがうんだよな。すべてが最初からちがうんだ。
あーあ、全部、つまらない。きちがいヘビメタ騒音中も、きちがいヘビメタが終わったあとも、全部、つまらない。こころが動かなくなった。普通の気持ちがなくなった。