言霊主義者である「ブラック社長」とその会社の従業員である「名前だけ店長」について考えてみよう。
ブラック社長が、名前だけ店長に、サービス残業を押し付けたとき、「名前だけ店長が「無理です」「できません」と言ったのだ。
それに対するブラック社長の返事は「できないと言うからできない」「無理だというから無理なんだ」「できると言えばできる」というものだった。
「できないと言うからできない」「無理だというから無理なんだ」「できると言えばできる」という一連の発言の背後には、言霊思想がある。
ブラック社長は、言霊主義者なのだ。
ほんとうは……「言えば言ったことが現実化する」ので、別に、サービス残業を押し付ける必要なんてないのだ。
わかるかな?
「自動的にこれこれのことが完了する」と言ってしまえば、言った通りになるので、ブラック社長は、名前だけ店長に、サービス残業を押し付ける必要がない。
ブラック社長は、いちおう、この世のルールにのっとって会社を経営しているのである。
ブラック社長が、名前だけ店長にサービス残業を押し付けたくなる気持ちというのは、どういうところから発生しているかというと、「自分がおカネを、もっともっともっと、儲けたい」というところから発生しているのだ。
ようするに、名前だけ店長という従業員に「ただ働き」をさせて、そのぶん、自分が儲けるつもりでいるのだ。
そもそも、サービス残業を押しけるということが、違法行為なのだけど、そんなことは、気にしない。ブラック社長は「自分の経営手腕だ」と思っている。
人がどうなろうが、自分のふところに、もっともっともっと、カネが入ってくればいいのである。そのために、言霊思想を利用しているだけだ。
しかし、ブラック社長は、ほんとうに、言霊思想を信じているのである。
自分にとって都合がいいときだけ、言霊思想を信じるということは、言霊主義者が普段からやっていることだ。
だから、ブラック社長が、言霊思想を「ほんとうに」信じていたとしても、不思議はない。
ようするに、ブラック社長が、言霊思想を信じているふりをしているのではなくて、言霊思想を信じているということだ。
けど、前から述べているように、ブラック社長が、カネを儲けたいのであれば、現実的なことをするのではなくて、言霊の力を使って、カネを儲ければいいのである。現実的なことをしてカネを儲けなければならないと考えている時点で、ブラック社長は言霊主義者ではないのだ。
はっきりと言うと、ブラック社長は、言霊なんてまったく信じていないのだ。言霊の力なんてまったく信じていないのだ。
だから、「言うことだけ」で問題を解決しようするのではなくて、現実的な方法で、問題を解決しようとする。
会社の経営をしているということは、「言霊の力を信じていない」ということをあらわしている。
「人は働くべきだ」と言った愚かな言霊主義者のように、ブラック社長は、ほんとうは、言霊なんてまったく信じていない人なのだ。
ところが、自分にとって都合がいいときだけ、「言霊を信じる」ようになる。「言霊の力は、絶対だ」と言うのである。「言ったことが現実化するので、できると言えばできる」と言うのである。
言霊の力が絶対なら、「一日以内に、自分の口座に一兆円振り込まれる」と言えばいい。そうすれば、言っただけで、言霊の力によって、一日以内に、自分の口座に一兆円振り込まれるのである。
どうして、このような方法を(ブラック社長が)採用しないのかというと、「そんなことを言ったって、現実化されるわけがない」と思っているからだ。深く深く……「そんなことは、無理だ」と思っているのである。
無理だと言うから、無理なんだろ。
できると言えばできるんじゃないのか?
「一日以内に、自分の口座に一兆円振り込まれる」と言ったって、実際に一兆円振り込まれることはないと(ブラック社長は)確信しているのである。
ようするに、言霊の力を否定しているのである。
「そんなことはありえない」と考えているのである。
「一日以内に、自分の口座に一兆円振り込まれると言うことによって、自分の口座に一兆円振り込まれるようにすることはできる」と言えば、「できるようになる」のである。言霊の力によって、できるようになる。
できないと言うから、できない。できると言えば、できる。