すでに、不幸な人がいるとする。とりあえず、ゼットさんだとする。
ゼットさんは、悪い家族にやられて不幸な状態で暮らしているとする。「Xをすれば、Yになる」という構造を持つ文というのは、一〇〇%詐欺になりやすいのである。
実際には、『Xをする』ということは、『言う』ということとおなじように、『すべてのXをする』ということを含んでしまう。
けど、言っている人は、別に、「条件に関係なく、すべての場合において、Xをすれば、Yになる」という意味で「Xをすれば、Yになる」と言っているわけではないのだ。
「Xをすれば、Yになることだってあるよ」という意味で、「Xをすれば、Yになる」と言ってしまっている。これは、そもそも、間違いなのだけど、気がつかない。
「条件に関係なく」という言葉を付けくわえなくても、「Xをすれば、Yになる」という文の意味は、「条件に関係なく、Xをすれば、Yになる」という文の意味と等価なのだ。
けど、「Xをすれば、Yになることだってあるよ」という文の意味は、「Xをすれば、Yになる」という文の意味と等価ではない。ぜんぜん、ちがうことを言っている。
けど、「ぜんぜんちがうことを言っている」という気持ちがないのである。あるいは、認識がないのである。
これは、じつは問題なんだよ。
「Xをすれば、Yになることだってあるよ」ということを言いたいのに「Xをすれば、Yになる」と言ってしまっている。
本人が言いたいことと、本人が選んだ文の意味がちがうのである。そして、本人が、そのことにまったく気がついていないのである。
自分が言っている文の正確な意味がわかっていないのだ。
あるいは、自分が言っていることの意味と自分が選んだ言い方の意味がちがうということに、気がついていないのだ。
しかし、本人は、「絶対に正しい」と思っている。「Xをすれば、Yになる」というのは、「真実だ」と本人は、本気で思っているのである。「Xをすれば、Yになる」というのは、「真理だ」と本人は、本気で思っているのである。
本人が「絶対に正しい」と思う文の意味を、本人が理解していないというのは、非常にこまったことなのである。最初の時点で、文の意味解釈に誤解がしょうじている。この問題を抱えたまま、最後まで、話が進んでしまう。
普通の人は、ゼットさんの生活がわからない。
普通の人は、ゼットさんの条件がわからない。
前向きな助言をするほうにしてみれば、ゼットさんの条件なんて、関係がないのである。
関係ないということ意味は、ふたつある。
ひとつは、ゼットさんの条件は、自分の条件ではないので、自分には関係がないという意味だ。もうひとつは、ゼットさんの条件がうみだすことは、ゼットさんには影響を与えないという意味だ。
ゼットさんの条件とおなじ条件を抱えて生きてきたわけではないので、ゼットさんが抱えている条件が「うみだすもの」がわかっていないのだ。その条件だと、どうしてもそうなるというような「必然性」がわからない。
わからなければ、無視してしまう。
そして、「そんなのは、言い訳だ」と言ってしまえば、必然性を無視してもいいということになってしまうのである。あるいは、「そんなのは、あまえだ」と言ってしまえば、 必然性を無視してもいいということになってしまうのである。
「すべては構文」というと問題があるのだけど、「Xをすれば、Yになる」という文は「すべてのXにおいて、Xをすれば、すべての場合において、Yになる」ということを言っているのである。たとえば、「言う」という集合のなかに、「小さな声で言う」とか「大きな声で言う」とか「ささやくように言う」とか「やる気がない感じて言う」という集合が含まれているのである。
もっとも、小さな声というのは、どのくらいの音量だと小さな声なのかという問題がある。それぞれ、言うほうの主観と、言われたほうの主観が異なる場合だってある。
だから、「小さな声」の定義というのが、ないようなものなのだ。三〇デシベル以下の声は、小さな声だとするというような定義を決めたとしても、その定義に汎用性がなければ、意味がないのである。
そして、普段、自分が言うとき、あるいは、他人が言うとき、デシベルをはかっているわけではないという問題がある。
しかし、ここでは、その問題は考えないことにする。ここで考えなければならないことは、小さな声で言うという集合が、言うという集合のなかに含まれるということだ。
「言えば、(言霊の力によって)言ったことが現実化する」という文の意味は、「小さな声で言えば、(言霊力によって) 言ったことが現実化する」という文の意味を含んでいるのである。
あるいは、おなじことなのだけど……「言えば、(言霊の力によって)言ったことが現実化する」という文の意味は、「小さな声で言っても、言えば、言ったことが現実化する」という文の意味を含んでいる。
だから、「小さな声で言ったから、現実化しなかった」というのは……それこそ……言い訳なのである。