「暗いことを考えると暗いことが起こる」ということについて考えてみよう。
たとえば、「あの店の階段は、あぶない」「あの店の階段で二回、足をすべらせて落ちたことがある」と考えたとする。
これは、根拠がある思考なのである。
普通の階段では落ちたことがないけど、あの店の階段では落ちたことがある……とする。
この場合「あの店に行くとケガをする」と考えても不思議ではない。「あの店に行くとケガをする」というのは、明るい考えではなくて、暗い考えだ。「あの店に行くとケガをする」と考えるのは、暗いことを考えているということになる。
けど、そういうふうに考えるだけの根拠があるのである。
過去において何回も発生したことは、これからも、発生する確率が高い」と考えるのは、不思議なことじゃない。
むしろ、過去において何回も発生したことなのに、「これからは絶対に発生しない」と考えるほうがおかしい。「あの店に行くとケガをする」と考えて、あの店に行かないようにするのと、「あの店に行ってもケガをすることは絶対にない」と考えて、頻繁にあの店に行くようにするのと、どっちのほうが、ケガをする確率がたかくなるか?
あの店でケガをする確率を考えるならば、「行かないようにする」と暗く考えたほうが、ケガをする確率が低くなる。あの店に行かなければ、あの店で、ケガをする確率はゼロになるだろう。行かないのだから……。
あの店に行かなくても、ケガをする確率はあるので、ケガをする確率はゼロにはならない。けど、あの店に行って、あの店でケガをする確率は、あの店に行かなければ、ゼロにできる。
「あの店に行くとケガをする」というのは、暗い考えで、「あの店に行ってもケガをしない」というのは、明るい考えだ。明るい考えをもつと、あの店でケガをする確率が高くなる。足しげく通うなら、実際にケガをする回数が増えるかもれない。
これは、根拠の問題なのである。
まったく、根拠なしに「暗いことが起こる」と考えることは、少ないのだ。たいていの場合は、根拠となる事実がある。繰り返し起こっていることは、また起こる可能性がある。