「脳は主語を認識しない」というような言い方がある。けど、これは、ほんとうだろうか? ぼくには、脳は、たいていの場合、主語を認識しているように思えるのだけど……。
たとえば、AさんとBさんがいたとする。Aさんがコーチで、Bさんが生徒だったとする。Aさんが「急げ」と言ったとする。その場合、Aさんは、「急げ」と言う言葉を自分にむかって言ったと、勘違いするのだろうか。それは、たいへんまれなケースで、脳の障害だと言っていい。たいていの場合は、Aさんは、Bさんにむかって(自分が)急げと言ったということを、認識してテル。つまり、主体(主格)や客体(対象格)を認識しているのである。なので、Aさんが、自分(Aさん)にむかって「急げ」と言ったと勘違いしてしまうということは、ほとんどの場合、ない。
「主語を認識しない」という言い方は、日本語だから、自然に思えるかもれない。もちろん、英語でも、命令文では、主語?を省略?する。しかし、日本語ほどは、主語を省略しない。主語を省略した言い方をすると、(自分に言った)と脳が勘違いしてしまうというのは、おかしい。対象者であるBさんにむかって、Aさんが「急げ」と言ったとき、Aさんは、Bさんにむかって、「急げ」と言ったことを認識しているわけで、勘違いして自分(Aさん)に言ったと思っているわけではない。
たとえば、うしろから、クラクションを鳴らされたとする。その場合、自分にむかって鳴らされたのか、ほかの人にむかって鳴らされたのか確認するために、うしろを見たとする。たしかに、自分が対象者であるかどうかわからないことがあるので、確認するという行為が必要になる場合がある。あるいは、ただ単に、大きな音に反応して、うしろを向く場合もある。なんらかの危険が迫っているかもしれないからね。
たとえば、「どけろ」という言葉が、うしろのほうから聞こえてきたとする。その場合、自分にむかって言ったのか、ほかの人にむかって言ったのか確認するために、うしろを見たとする。たしかに、自分が対象者であるかどうかわからないことがあるので、確認するという行為が必要になる場合がある。しかし、この場合も、「どけろ」と言った本人が、自分にむかって「どけろ」と言ったのかどうかわからないということは、普通ではありえないケースだ。完全におかしい人ならありえるけど、普通の人の場合、ありえない。自分にむかって「どけろ」と言ったのか……他人にむかってどけろと言ったのか「脳が認識できない」ということは、ほとんどない。
ちゃんと、脳は文脈を理解して、その言葉を発している。「脳は、主語を認識できない」ということは、たいていの場合、ない。
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「急げ」と言ったとき、「急げ」という言葉を、自分に言ったのか、ほかの人に言ったのか、わからないとする。この場合は、対象を認識していないわけであって、「主語」を認識していないわけではない。通常は、自分が「急げ」と言ったときは、自分が「急げ」と言ったことを、認識している。「わたしは、急げと言った」という文を考えた場合、急げと言ったのは、自分だということになる。ちゃんと、わたしが「急げ」と言ったということを認識している。だれか他人に「急げ」と言ったのに、脳が勝手に?「自分にむかって」自分が急げと言ったと勘違いしてしまうことは(たいていの場合)ない。
他人に言ったことを、脳が自分に言ったことだと勘違いしてしまうことなんて、普通はない。ちゃんと、脳は、自分が他人にその言葉を言ったということを、認識している。他人に言う前も、他人に言うつもりで、他人に言おうとしている。勘違いしてしまう脳が、他人に言うつもりの言葉を、自分に言おうとしているということは、普通の場合、ない。