これは言ってしまってはいけないことなのかもしれないけど、世の精神世界の人は、みんな、ジャイアンに「のび太をなぐるな」とは言わず、のび太に「明るいことを考えればいい」と言ってしまうのだ。
「のび太が、暗いことを考えたから、暗いことが起こった」と言ってしまうのだ。「のび太が、ジャイアンになぐられると思ったから、ジャイアンが実際にのび太をなぐった」と言ってしまうのだ。
だから、「ジャイアンはなぐってこないと思えば、なぐってこない」と言ってしまうのだ。
もうすでに、なぐられている人にそういうことを言う。
こんな解決法で、問題が解決するわけがない。問題が解決しないから、なぐられているんだろ。こんな解決法では、解決しないから、のび太がこまっているんだろ。こんなの、こまっているのび太をさらにこまらせるだけだ。
そして、ジャイアンがかわらなければ、のび太がどれだけ、のび太の頭のなかで「ジャイアンはなぐってこない」と思っても、ジャイアンがなぐってくるわけだ。
そうなると、のび太が本気で「ジャイアンはなぐってこない」と思わなかったから、だめなんだと、のび太の思い方のせいにしてしまうのである。
こんなのはない。
のび太が「ジャイアンはなぐってこない」と明るいことを考えたって、ジャイアンがかわらなければ、ジャイアンはなぐってくる。のび太の思考が、そういうレベルでジャイアンに影響をあたえるのであれば、そもそも、ジャイアンは、一回目、のび太をなぐってない。
なんでこんなに、簡単なことがわからなくなってしまうんだ。
しかも、あとだし思考があるので、実際にジャイアンがのび太のことをなぐることをやめなければ、のび太の思い方は、ずっと、悪い思い方なのである。
「悪い思い方だから、効果が出ない。いい思い方だったら、効果が出る。のび太の思い方が、へたくそだから、効果が出ないのだ」ということになっているのだけど、それは、ジャイアンがなぐってくるという結果を見てから、言っているだけのことなのである。
のび太の思い方に関係なく、ジャイアンがのび太をなぐることをやめたとする。その場合、のび太の思い方が、いい思い方になったと、精神世界の人は判断するのである。
あとだし。言っている意味がわかるかな? あとだしなんだよ。
ジャイアンがなんらかの理由で、なぐるのをやめない限り、ずっと、のび太の思い方は、悪い思い方なのである。そういうことに決まってしまうのである。こんなの、ていのいい、いじめ。精神世界の人は、「善」だとか「光の世界」とか「良心」とかということについて語っているけど、こういうことを忘れてしまっている。