こうしているあいだも、ヘビメタ騒音の感じが持続しているので、いやな人生だったと思う。あんなのが続いていいわけがないだろ。なにが「言ったことが現実化する」だ? なにが「明るいことを思えば明るいことが現実化する」だ? ふざけんな。ふざけんな。
この日曜日の午後……の雰囲気……。これ、ほんとうに、ヘビメタ騒音の雰囲気だ。至近距離で鳴っていた。鳴りはじめたら、どれだけ言っても、一秒もやめてくれない。
きちがいが、きちがいの音で、きちがいの意地で鳴らす。
みんな、知らない。うちで鳴っているだけだから、学校の友達は知らない。学校の人は知らない。
俺が言っても、きちがい家族がいない人たちばかりだから、きちがい家族の「維持」がわからない。きちがい家族の「こだわり」がわからない。
どしうて、ぼくが、兄貴のことをきちがいと言わなければならないのか?
反応がおかしいからだ。みんな、きちがい兄貴の、きちがい的な部分が……そもそもわからない。だから、普通の騒音だと思ってしまう。普通の「兄」だと思ってしまう。普通の家族がやっていることだと思ってしまう。
もう、ここで、誤解がしょうじてしまう。もちろん、ここで生じた誤解について、張本人であるきちがい兄貴は、知る由(よし)もない。
張本人が、学校の人たちの「認知」ときちがい兄貴が実際にやっていることの「ずれ」を認識することは、ない。絶対にない。そりゃ、自分がやっていることがわからないからだ。
普通の人だったら、あんな音では、鳴らしたくても鳴らさないんだよ。
あんな音で鳴らしてしまうということ自体が、「ぶっこわれている」。きちがいだ。なにもわかってないきちがいだ。
どれだけ、きちがい兄貴がやっていることは、常識はずれなことだ……ということを兄貴に言ったって、きちがい兄貴は、認めない。発狂してやりきる。
ところが、これまた、きちがい兄貴はきちがいだから「やりきった」という気持が生じない。相手が文句を言ってきた……ということすら、自分がやり通せるなら、忘れてしまう。なら、こだわらないいい性格かというと、ちがうのである。
きちがい兄貴が「悪いこと」を押し通して、相手に文句を言われたということを、瞬時に忘れてしまうのである。忘れてしまうのだか、こだわらない性格」だということができそうな感じがするけど、言うことはできない。「こだわらない性格」には、いいニュアンスが含まれている。
たとえば、自分が相手に、悪いことをされて、おこったけど、すぐに水流して、相手が自分にやったことを忘れてあげるというような性格もこだわらない性格と表現されることがある。「こだわらない性格」というのは、相手が自分に不愉快なことをやってきたときも、すぐに忘れてあげるというようなニュアンスがある。
けど、きちがい兄貴は、自分、相手に悪いことをして、悪いことをしたということまったく認識しない人たちなのである。だから、「こだわらない性格」というような良いニュアンスをもっている言葉は、使えない。
きちがい兄貴やきちがい親父に、俺が「こういうことがあった」いうことを言ったとする。たとえば、きちがい兄貴が俺の言い分を無視して、鳴らし続けてしまったということを、俺が兄貴に言ったとする。
兄貴は、言われたときに(自分が)不愉快なのであれば、おこっておこって、おこって、おこって、認めない。即座に発狂して、腹をたてて認めない。
こういうやり取りも、きちがい兄貴、本人の頭の中に、まったく残らないのだ。相手が言っていることというのは、「感じ」でしかないんだよ。いちおう、兄貴のことを書いたけど、親父の場合もおなじだ。これ、まったくおなじなんだよ。
なんとなく、自分にって不都合なことを言われたというレベルの、漠然とした理解なんだよ。意識のレベルでは、漠然としたレベルのままなんだよ。無意識のレベルでは、相手の言ったことを……認めてしまうと、自分が「押し通すことができなくなることだ」ということを、正確に理解しているんだよ。
けど、それは、意識には登らないわけ。
だから、ものすごくへんな態度なんだよ。相手が言ったことのうち……自分の行為にかかわる基本的なことを、絶対の意地で認めないのだ。
基本的なことを認めると、やめなければならなくなるから、認めないのである。きちがい兄貴なら、ヘビメタの音が「でかい」ということを認めない。
こんなの、聴覚が正常なら、だれだってわかることだ。
けど、そのときだけ、聴覚に異常がしょうじて?わからなくなってしまうのである。
けど、ほんとうには、聴覚に異常がしょうじたわけではないのである。聴覚に異常がしょうじたのではなくて、聴覚が認識したものを、受け止める部分に、異常がしょうじたのである。
性格的に……聴覚に異常がしょうじたような状態になって、認めないのである。もちろん、性格的にと書いたけど、本人は、「知らない」のだよ。自分が「そうしている」ということを知らない。
けど、自分にとって都合が悪いことを言われると、いつもそうなるんだよ。だから、こまるんだよ。きちがい兄貴は知らないわけだし、よその人も、そんな異常な人がいるとは思わないので、たいしたことじゃないと思っているわけ。
きちがい兄貴も、きちがい兄貴がやっていることがわからないし、よその人も、きちがい兄貴がやっていることがわからないということになる。これが毎日続いたら、こまるんだよ。
この機能??……このきちがい機能をいつも、もちいて、きちがいヘビメタを、猛烈にでかい音で鳴らしてしまうのだけど、いつも、でかい音で鳴らしていないつもりのままなのだ。
「しずかにしてくれ」と言われたら、「なんだか不都合なことを言われた」ということだけがわかるので、きちがい的な意地ではねのけようとする。きちがい兄貴は、発狂して、きちがい的な意地ではねのける。
この時に、殺してやめさせないと、(きちがい兄貴は)やりきってしまう。殺せなかったので、やられてしまった。
ともかく、「うち」で鳴っている音なんて、学校の人たちはまったく知らないから、どうでもいい問題だということになる。学校で、きちがい兄貴が、きちがい感覚で、きちがい的にでかい音で鳴らているわけではないからね。
直接、被害をうけるのは、ぼくの部屋にいるぼくだけだ。
きちがい兄貴が、普通に鳴らしているときに、ぼくの部屋に来れば、だれもが、「うるさい」と思う音で鳴っているんだよ。「いつもこんな音で鳴っているの?」と思う音で鳴っているんだよ。
だから、きちがい兄貴が、きちがい兄貴の感覚で、普通の音で鳴らしいるとき、うちにくれば、ぼくが言っていることが正しいということが、一発でわかるんだよ。