これ、ほんとうに、言っていいのかどうかわからないけど……。あんまり言いたくないことなのだけど……。
ともかく、ぼくは、せめるつもりはないから……。
で、言っておくと、言霊主義者というのは、自分の具体的な問題に関しては、言霊の力(ちから)に頼ってないのである。
言霊の力(ちから)で、問題を解決しようとしないのである。
相手の問題だと、相手の事情がわからないので、言霊的な解決法をすすめるのである。相手の事情というのは、聴けば、あるていどはわかるけど、ほんとうには、わかっているわけではないんだよ。
相手のことだから……。
自分は「相手のからだ」を使って生活しているわけではないから、わからない。自分は、相手の立場でほかの人と接しているわけではないので、わからない。相手の立場そのものと、自分が理解している相手の立場というのには、相当の隔たりがある。
けど、このへだたりを、無視してしまうのである。だいたいわかれば、わかったのとおなじだと考えてしまうのである。
だから、自分には適応しない言霊的な解決法を、相手にはすすめるということになる。
たとえば、頭がおかしい上司にいじめられている人がいたとする。その人をAさんと呼び、頭がおかしい上司のことを「アタオカ上司と呼ぶとする。Aさんは言霊主義者だ。かなり熱心な言霊信者と言ってもい。
言霊的解決法が有効なら、Aさんは、「今日中に、アタオカ上司がクビになる」と言えば、それですむことになる。明日になれば、アタオカ上司はいないので、安心して職場にくることができる。
あるいは、会社をやめて「自分のなになに銀行の口座に、今日中に、六〇〇〇万円が振り込まれる」と言えばいいのである。
そうすれば、そんな、アタオカ上司がいるような会社で、働く必要がなくなる。
他にもいろいろとあるけど、それを言っちゃうと、やばいので、まあ、こんなことを言えばいいということを書いておいた。
ところが、Aさんは言霊主義者で、言霊には、超・物理的なすごい力(ちから)が宿っていると考えているにもかかわらず、こういう現実的な問題に関しては、言霊的解決法を使わないのである。
これは、仮定の話だけど、アタオカ上司に丁寧な言葉を使うようにしたら、アタオカ上司の自分に対する印象がよくなり、いじめがやんだとする。その場合、Aさんは、「言霊はすごい」「丁寧な言葉を使うようにしたら、アタオカ上司がかわった」と言ったとする。
これは、悪いけど、言霊の力(ちから)ではなくて、言葉の力(ちから)だ。こういうちがいがわかってない。
言霊の力(ちから)というのは、超・物理的な、魔法の力(ちから)なのである。アタオカ上司が、日本語を理解しなかったら、アタオカ上司の変化はない。
言霊は、日本語を理解しない相手にも通用するものだ。
言霊は、非・生命体にも通用するものだ。
たとえば、普通は、リンゴの木からリンゴがおちる。万有引力によって、リンゴが地球にひっぱられているからだ。
しかし、「リンゴよ、あがれ」と言えば、リンゴが、超・物理的な魔法の力(ちから)によって、あがるようになるのだ。
言霊には、そういう、超・物理的な力(ちから)が宿っているというのが、言霊理論なのだ。「木になっているリンゴは、上にむかって移動して、地球から出ていく」と言えば、超・物理的な力(ちから)によってそうなる。
「言ったことが現実化する」というのは、そういうことなのだ。
なぜなら、言ったことが現実化するというのは、「一〇〇%の言ったことが、一〇〇%の確率で現実化する」ということだからだ。
物質は、物理法則にしたがわず、言霊の法則にしたがって、運動するのだ。これが、「言霊にはものすごい力(ちから)が宿っている」と言ったときの「言霊の力(ちから)」だ。
ところが、そういうふうに言っている本人が、そういう力(ちから)を「信じていない」のである。
なので、自分がよく知っていることに関しては、物理法則をうらぎるようなことは、言わない。超・物理的な力(ちから)によって、それが、現実化することがないことを知っているから、そういうことを言わない。
人に言うときは「超物理的な力(ちから)が宿っている」「言ったことが現実化する(一〇〇%の言ったことが、一〇〇%の確率で現実化するという意味)」「言霊はすごいパワーをもっている」ということを言うわけだけど、自分のことに関しては、言霊の神秘的な力(ちから)を使うことはないのだ。
「三秒後に、アタオカ上司が転勤する」と言えば、三秒後にアタオカ上司が転勤するのである。「三秒後に、アタオカ上司が死ぬ」と言えば、三秒後にアタオカ上司が死ぬのである。これが、その人たちが言っている言霊の神秘的な力(ちから)なのだ。超・物理的な力(ちから)なのだ。
ところが、この人たちは、そういうことをしない。さすがに、「三秒後に、アタオカ上司が死ぬ」と言うのは、倫理的に問題がある。なので、「三秒後に、アタオカ上司が転勤する」と言うということを選択したとしよう。
「三秒後に、アタオカ上司が転勤する」と言った。……三秒後に、転勤するだろうか。転勤しない。なので、三秒後には、結果がわかってしまうことなので、言わない。こころみようともしない。言ったってむだだからだ。
言霊にはそんな神秘的な力(ちから)、魔法的な力(ちから)、超・物理的な力(ちから)がないということを、言霊主義者のAさんは知っているから、言わない。
けど、他人には、言霊には、神秘的な力(ちから)、魔法的な力(ちから)、超・物理的な力(ちから)があると言う。
さらに、たとえば、Aさんが「アタオカ上司が転勤する」と言ったあと、三年したら、、アタオカ上司が転勤したとする。
そうしたら、Aさんは、「言霊は正しい」「言霊にはすごいパワーが宿っている」と言い出すのだ。この場合は、神秘的な力(ちから)、魔法的な力(ちから)、超・物理的な力(ちから)が働いたと考えるのだ。
けど、これは、ほかの理由で、転勤しただけだ。まさに、「から」と「あと」を勘違いしている。言ったからではなくて、言ったあと、アタオカ上司が転勤したのだ。