言霊論者は、「言ったことが現実化する」と言っているけど、言ったのに現実化しなかったことは、ガン無視して生きているんだよ。
言わなかったのに、現実化したことも、言霊の理論との関係は考えずに、そのまま、「こういうことが起こったのか」と思って認めてしまうんだよ。
「自分が言わなかったら、現実しかないはずだ」というようなことは考えないんだよ。
言霊というのは、まず、第一に自分の言霊なのである。
「自分が言った通りになる」ということなのである。
普段、自分が言った通りにならなかったことは、無視しているのである。そして、言わなかったことが起こった場合でも、その出来事と言霊理論との関係は、無視しているのである。
全部が全部、自分が言った通りになるわけがないだろ。
けど、そういう前提が成り立っているようなことを……言霊主義者は言うのである。
「全部が全部、自分が言った通りになる」と思って(言霊主義者は)生きているのである。けど、それは、ごくわずかな、特別に意識的な部分に限られるのである。
「明日、雨になると言って、雨になったから、言霊理論は正しい」と思ってしまうような幼稚なやつらなんだよ。「明日、雨になる」と言ったのに、雨にならなかった場合は、自分が「明日、雨になる」と言ったことを無視してしまうのである。
「雨にならなかった(雨がふらなかった)」という事実をそのまま受け止めて、言霊のとの関係についてまったく考えないのである。もちろん、雨にならなかった(雨がふらなかった)ということを経験したあとも、依然として「言霊理論は正しい」と思っている状態が続く。
たとえば、自分が目を覚まして、起きたあと、テレビのニュースで殺人事件が起こったことを知ったとする。「自分が言わなかった」のに、殺人事件が起きたのである。
言霊主義者は「自分が言ったことが現実化する」と激しく主張しているんだぞ。
「どうして、自分が言わなかった殺人事件が起こったのか」ということに、疑問をもたなければ、だめだろ。
ところが、自分が言わなかった殺人事件が起きたということを知っても、そういうものだと思ってしまうのである。言霊理論との関係なんて、一切合切考えないんだよ。
たとえば、自分が起きたあと、テレビのニュースで、芸能人のCさんが浮気をしたということを知ったとする。
「自分が言わなかった」のに、芸能人のCさんが浮気をしたのである。おかしいだろ。Cさんが浮気をするには、「自分」が「Cさんが浮気をする」と言わなければならないのだ。そうじゃないと、言霊理論が正しいとは言えなくなる。
すべての発生することについて、事前に「自分か言っておかなければならない」のである。そうでなければ、言霊理論は正しくないのである。
たとえば、人類が発生する前に、地球が発生した。地球が発生するとだれかが言ったから、地球が発生したのではないのだ。人類が発生する前に、火山が噴火した。だれかが「火山が噴火する」と言ったから、火山が噴火したわけではないのだ。
このふたつの例は、「自分」ではなくても、「だれかが」言えばそれが現実化するという言い訳を……言霊主義者がすることを考えて、あげておいた。
基本的には、言霊主義者は幼児的万能感に支配されているために、「自分が」言ったことが現実化すると言っているのである。
しかし、言霊主義者は、反論として……自分ではない、だれかが「芸能人のCさんが浮気をする」と言ったから、芸能人のCさんが浮気をしたということを言う場合がある。
「自分じゃなくても、だれかが言ったからそうなった」という理論だ。
この場合、Cさんの意思というのは、関係がないのである。Cさんが「これから、私は浮気をする」と言った場合を除いて、Cさんは、だれかほかの人の発言によって浮気をしたということになる。こんな、アホなことを言っているのが、言霊主義者だ。
「自分は言っただけで、すべての事柄を発生させることができる」ということを……言霊主義者は、言っているのである。
けど、言霊主義者には、そのつもりがないのである。言霊主義者はいっぽうでは、「自分は言っただけで、すべての事柄を発生させることができる」ということを考えているのだけど、自分が「自分は言っただけで、すべての事柄を発生させることができる」ということを考えているという明確な意識はないのである。
言霊主義者は、自分の言葉ですべてのことを、制御できるということを言っているのである。
けど、もちろん、現実世界においては、そんなことはない。
だから、妄想なのである。
勝手に、「自分が言えば、言った通りになる」と思っているだけなのである。
これが妄想でなくてなんだ?