言霊思考というのは、現実の格差を覆い隠し、現実の格差で優位なものを引き上げてしまうのである。ブーストしてしまうのである。
ようするに、格差をひろげるものとして機能してしまうのである。
選挙について言ったけど、選挙というのは、まさしく、格差の象徴のようなものだ。おカネと地盤……。どこの家に生まれたかで、選挙に勝てるかどうかということが、だいたい決まってしまう。
もちろん、知名度もあるけど、知名度に関しても、格差がある。
Aさんと、Bさんがいたとする。Aさんは、有名政治家の息子だ。Bさんは、貧乏人だ。Bさんは、選挙に出ることすらできない。カネがないということは、出馬できないということなのである。
カネをつくろうとすると、いろいろなところに、借りができる。自分がやりたいことと、カネを出してくれた人が、自分にやらせたいことが、完全に一致しているのであれば問題は小さいけど、完全に一致しているのでなければ、大きな問題が発生する。
そして、最低限の出馬費用だけではなくて、おカネの差は、選挙結果に影響をあたえる。Aさんが「選挙に勝つ」と言ったとしよう。そして、Bさんも「選挙に勝つ」と言ったとする。
言霊理論にしたがえば、両方とも勝つはずなのである。しかし、Aさんは選挙に勝ったけど、Bさんは選挙に負けたとする。Aさんは、衆議院議員になったけど、Bさんは衆議院議員になれなかったとする。
この場合、言霊主義者は、どのように判断するかというと、Aさんの言霊の力のほうが強かったと判断してしまうのである。
だから、現実の格差を覆い隠し、現実の格差で優位なものを引き上げてしまうことになるのである。言霊主義者の頭のなかでは、Aさんの言霊のほうが強かったから、Aさんが勝ったということになってしまうのである。
生まれた家の差とかおカネとかの差が、「言霊力」の差に置き換わってしまうのである。
強い言霊力をもっているAさんのほうが、弱い言霊力しかもっていないBさんよりも、人間として優れているということになってしまうのである。言霊主義者の頭のなかではそうなってしまうのである。
そして、Bさんも「選挙に勝つ」と言ったことは、無視されてしまうのである。
言霊理論が正しいのであれば、「選挙に勝つ」と言ったのだから、選挙に勝つはずなのだ。
ようするに、「選挙に勝つ」と言ったBさんが選挙に負けたということは、言霊理論が正しくないということを、意味しているのである。
もちろん、言霊主義者は、そのことを、無視する。言霊理論に合致しない現実は、無視してしまうのである。だから、いつまでも、いつまでも……言霊主義者の頭のなかでは「言霊理論は正しい」ということになっているのである。