きちがい兄貴が、普通の人にはないしくみをもっていて、普通の人がやらないことをやってしまったのである。だから、これは、もともとは、きちがい兄貴の問題なのだ。しかし、きちがい兄貴が、きちがい兄貴の不思議な感覚で、ものすごくでかい音で騒音を鳴らすことによって、騒音の影響をうけたのは、ぼくなのだ。そして、証明することはできないけど、きちがい兄貴のやり方で、騒音を鳴らすなら、横の部屋に住んでいる人は、影響をうけるのだ。ぼくと同じレベルの影響をうけて、ぼくとおなじ症状がしょうじる。けど、きちがい兄貴の感覚が、きちがい的な感覚なので、兄貴限定であって、うち限定であったの。よその人も、おなじことをやられれば、おなじように、被害をうけたのに、よその人は、おなじことをやられなかったので、被害をうけなかったのだ。まずここに、普通の人とぼくのちがいがある。
きちがい兄貴がやったことは、普通の人が「長期間にわたって」経験しないことなのである。騒音といったって、騒音生活といったって、きちがい兄貴のやり方が、きちがい的だから、普通のうちではありえないことなのである。普通のうちでは、絶対に経験しないことなのである。けど、騒音ぐらいだれだって経験したことがある。つかれだって、経験したことがある。憂鬱な状態だって、経験したことがある。遅刻しそうになったときの気分は、経験したことがある。眠れない夜をすごした経験は、だれだってある。寝不足で、動いた経験は、だれだって、ある。だれだって、ある。だれだって、経験したことがあることなのである。けど、家族の騒音によって、不可避的にそのすべての状態を「毎日毎日」ずっと経験した人は、少ないのである。きちがい兄貴の狂い方が、普通じゃないので、普通の人が経験しないことを、ぼくは、十数年間にわたって経験してしまったのである。その十数年間の、しんどい状態は、少数の人が経験したことなのである。しかも、「家族」によって、それが引きおこされた人なんて、ぼくしかいないのではないかと思えることだ。普通の人は、きちがい兄貴のことを理解しないけど、きちがい親父のことも理解しない。だから、「家族で話し合えばいい」「家族なんだから、ちゃんと言えばわかってくれる」「そんなの、お兄さんに言えば、解決することだろ」と言うのである。けど、それがちがうのだ。
こういうところに、基本的なずれがあるから、普通の人は、普通に考えてぼくのことを悪く言うのである。そして、たとえば、うつ病的な鬱や慢性疲労症候群患者のような疲労や、どうすることもできない睡眠障害というのは、ほかの人から見て、「ダメな」特徴なのである。それぞれ、俺だって憂鬱なときはある……俺だってつかれてい……俺だって眠たいときはある……というように、みんながある程度経験していることなのだけど、程度がちがうのである。深さがちがうのである。そして、ほかの人がある程度経験していることの……根本原因が、きちがい家族によるものではないのである。俺だって、親父のことを横に置くなら、きちがい兄貴がヘビメタをやるまでは、普通の憂鬱、普通の疲労、普通の眠たい状態しか、経験したことがなかったのである。
ぜんぜんちがうのだけど、ちがいがわからない。普通の人は、普通の普通の憂鬱、普通の疲労、普通の眠たい状態しか経験したことがないので、きちがい家族によってしょうじる、きちがい騒音にさらされているからこそしょうじる憂鬱、きちがい騒音にさらされているからこそしょうじる疲労、きちがい騒音にさらされているからこそしょうじる眠たい状態を経験したことがないのである。だから、わかっていないのである。わかってない。わかってない。
そうなると、文句を言うようになるのである。基本的に、きちがいヘビメタ騒音生活というのは、ほかの人に文句を言われやすい生活なのである。