たとえば、年金の受取額というのは、過去の出来事が影響している。過去の自分の行いが、年金の受給額に影響しているのだ。
言霊主義者は、「言った」ということ以外の、過去の出来事がもつ意味を否定してしまう。
たとえば、ある言霊主義者が「これ以降、年金が月に三〇万円もらえるようになる」と言ったとする。主格が明確ではないけど、主格は、ある言霊主義者だ。まあ、厳密に考えると、問題がある言い方だよな。
じゃあ、別の言い方にしよう。
「これ以降、自分の年金が月に三〇万円になる」と言うことにしよう。ある言霊主義者が「これ以降、自分の年金が月に三〇万円になる」と言った。言ったのだから、言ったことが現実化するのである。
言霊理論が正しければ、ある言霊主義者の年金が、月に三〇万円になるのである。もうちょっと正確に言うことにしよう。
「これ以降、自分の年金が月に三〇万円、自分の○○銀行の口座に振り込まれることになる」と言ったとする。そういうふうに言った場合「自分の年金が月に三〇万円、自分の○○銀行の口座に振り込まれることになる」のである。
言ったことが現実化するのだから、そうなる。
言霊理論が正しければ、言ったのだから、言った通りになるのである。
ところで、ある言霊主義者は、年金が月換算で六万円と少額だったとする。ある言霊主義者は、その年金額に不満をのべているのだ。
言っておくけど、年金が二カ月に一回振り込まれるということは、(ぼくは)知っている。
けど、「自分の年金が月に三〇万円、自分の○○銀行の口座に振り込まれることになる」と言ったとたんに、二カ月に一回ではなくて、月に一回振り込まれるようになるのだ。
言霊の力によって、制度がかわる。
言霊主義者が言った言葉にあわせて、制度がかわるのだ。
どうしてかというと、言ったことが現実化するからだ。
「月に三〇万円、振り込まれるようになる」といったら、「月に三〇万円、振り込まれるようになる」のだ。二カ月に一回六〇万円振り込まれるのではなくて、月に一回三〇万円振り込まれるようになるのだ。
言ったことが現実化するので、そうなる。
自分が言っただけで、社会制度なんて、好きなようにかえられるのだ。
DさんとEさんの会話について、ぼくが語ったことがあるけど、DさんもEさんも、言霊主義者なのだから、DさんもEさんも、自分が思った通りの政治制度にすればいいのだ。社会的な制度なんて、すべて、言っただけで、かえることができる。
どうしてなら、言えば言ったことが現実化するからだ。
ところが、自分の現実的な問題だと「言霊のこと」なんて、すっかり忘れてしまうのである。言霊主義者は、自分が、言霊の力を使えるということを、わすれてしまうのである。
言霊主義者なのだから、年金額の少なさで悩む必要なんてないだろ。
言えば言った通りになるのだから、言えばいい。
「言霊は絶対」ので、言っただけ、言った通りになるのだろう。ちがうというのであれば、もちろん、言霊理論を否定したことになる。
年金額が少ない、ある言霊主義者が、「年金が増えればなぁ」なんてことを言っているのである。
はぁ? 年金額なんて、言えば言った通りになるのだから、言えばいいだけだろ。
「できると言えば、できる」のだろ。「言うことで、年金額をかえることができる」と言えば、言うだけで、年金額をかえることができるんだよ。
どうして、自分のことだと、言って解決しようとしないんだよ。
どうして、ほかの人のことになると、過去を無視してしまうんだよ。いちおう、その個人がもらえる年金額は、その個人の過去の行為と、社会制度によって決まるのだ。社会制度も、それに関連した法律が通ったという過去の出来事が影響しているのだ。
言えば言っただけで、社会制度がわかるわけじゃない。
けど、カルト言霊主義者は「言えば言ったことが現実化する」「これが正しい」と言い張って聞かないのである。
じゃあ、自分が、普段どういうふうに生活しているのかというと、じつは「言ったって、かわらない」と思って、生活しているのである。
過去の出来事は現在の状態に影響をあたえると思って生活しているのである。言っただけで、過去の出来事があたえる影響がわかるとは思っていないのである。
言霊主義者は、「言った」という過去の出来事以外の出来事は、すべて関係がないと思っているのだ。
「言った」という過去の出来事以外のすべての出来事は、現在の状態に影響をあたえないと思っているのだ。
かりに影響をあたえていたとしても、そんなのは、「言ってしまえば」言っただけで、いかようにでも、変換することができるのである。
これは、「過去は関係がない」という考え方だ。ところが、「言った」という過去だけは、現在に影響をあたえるのである。これは、「過去は関係がある」という考え方だ。
言霊主義者は「言った」という過去以外の過去を否定しているのである。もう、過去の出来事が実際に発生したということも、「言えば上書きできる」ので、いかようにでも、かえることができると思っているのだ。
だいたい、時間に関しても、言うことは、可能なのだ。「一〇年間、時間が逆に流れる」と言えば、「一〇年間、時間が逆に流れる」のである。
それがどういう意味なのかは知らないけど、とりあえず、言ったことが現実化するのだから、そうなるのである。「一秒後に、三〇年前にもどる」と言えば、「一秒後に、三〇年前にもどる」のだ。
時間だって、制御できるのである。
タイムマシンなんてなくても、言っただけで、時間旅行ができる。まあ、「一秒後に、タイムマシンがこの部屋にあらわれる」と言えば、言っただけで、タイムマシンをゲットすることができるのだ。
個人が、時間を旅するのではなくて、地球全体、宇宙全体が、タイムリープするということだって、可能だ。言えば言ったことが現実化するので、言えばいいだけだ。簡単。簡単。
言霊主義者は、「元気だ元気だと言えば元気になる」と言うけど、それは、理由があって、つかれはてている人には、めちゃくちゃにひどい言葉なのである。
どうしてかというと、過去において、出来事が発生して、つかれているのに、過去において出来事が発生したという事実を(言霊主義者が)ガン無視しているからだ。
ほんとうに、つかれている人は、「元気だ元気だと言えば元気になる」と言われると、不愉快な気持になるのだ。
自分の過去を全部否定されたから、不愉快な気持になる。
過去がもっている意味を全部否定されたので、不愉快になる。
実際の出来事でつかれたのである。「これから俺はつかれるぞ」と思って「つかれた」と言ったから、事実に関係なく、つかれを感じたわけではないのである。