ヘビメタ騒音なしで生きたかった。ヘビメタ騒音なしで、あの子と、つきあいたかった。
ヘビメタ騒音で汚染されているダメなのである。
あのとき、すでに、ヘビメタ騒音に汚染されていた。
ヘビメタ騒音に汚染されて七年がすぎていた。七年……。ながい……。ながい……。七年間毎日続くということが、どういうことなのかわかっていないやつが……『関係ない』と言う。ほんとうに、ぶんなぐってやりたいほど頭にくる。
だいたい、「さぼろうとしている」としているという文脈で、理解しようとするやつらは、くそだ。
「ヘビメタ騒音なんて、関係がないのに、関係があると言って、さぼろうとしている」と思っているわけだ。だから、『関係ない』と言うわけだ。
ほんとうに、ふざけている。
どれだけきつい毎日か、まったくわかっていない。
どれだけ汚染されないように気をはっても、けっきょく、どろどろに汚染される。
これが、わかっていないのである。ヘビメタ騒音が鳴っているときだけくるしいわけじゃないのである。ヘビメタ騒音が鳴っているときもくるしいけど、ヘビメタ騒音が鳴り終わったあとも、ずっと、くるしいのである。
そして、不可避的に、睡眠時間と睡眠の質に影響をあたえる。睡眠時間と睡眠の質は、脳みその働きに影響をあたえる。
そして、一番深い眠りになったとき……起こされるということが、これまた、つらいのである。そのつらさを、がまんして、無理やり体を動かしているときの切迫感が半端じゃないのである。
きちがい兄貴は、全期間じゃないけど、四年間ぐらい、朝も、ヘビメタを鳴らしていたのだ。一五分ぐらいだけど、学校に持って行くものを探しているときに、鳴っていることになるから……昨日の分も含めて、破滅的な気分になるのである。
殺したくなるのである。殺して、やめさせたくなるのである。
音の中で探すことになるので、当然、忘れ物が増える。そして、忘れ物のトラブルが増える。エイリというやつは、忘れ物をしやすいダメなやつだというイメージが、ほかの人の頭に残ってしまう。
そして、実際に、トラブルもあるわけだ。
だって、必要なものがないわけだから……。
それをどうにかしようとすると、また、トラブルが発生するのである。そして、家に帰ると、きちがい兄貴のきちがい騒音が、けたたましい音で、鳴っているのである。
「いいかげんにろ」「学校でこういうことがあった」「忘れ物が増えるから、鳴らすな」「眠れなくなるから鳴らすな」「勉強をするから鳴らすな」と言っても、きちがい兄貴が、腹をたてて、鳴らしてしまうのである。やめてくれないのである。どれだけ言っても、やめてくれない。
きちがい兄貴が、きちがい親父の態度で、否定して、鳴らす。きちがいだから、それだけこだわってこだわってこだわって、きちがい的な意地で鳴らしても、鳴らしたつもりがないのだ。
これ、言いにくいことなんだよな。これ、説明しにくいことなんだよな。そして、当のきちがい兄貴が、一番わかっていないのである。こういう、しくみが成り立っている。このしくみは、きちがい兄貴にとってだけ都合がいいしくみなんだよ。
こういうしくみが成り立っている……兄貴の側にこういうしくみが成り立っているということを理解しないやつらが……「そんなのは、ちゃんと言えば(お兄さんは)わかってくれる」と言う。「ちゃんと言わないからダメなんだ」と言いやがる。
おまえらがわかってないだけだろ。
こいつらがわかってないだけなのだ。
こいつらのわからない度合いを一〇だとする、きちがい兄貴のわからない度合いが一〇万ぐらいなのだ。本人のことなのに、本人が一番わかっていない。
一番わからないしくみというのも、同時に成り立っていて、そのしくみのおかけで、なにも、心配しないで鳴らすことができるのだ。
どれだけ、やったって、やってないのとおなじ気持ちなのだ。まったく一秒も鳴らしていないときとおなじ、認識をもてるのだ。
頭がおかしいからそうなんだよ。