「過去は現在の状態に影響をあたえない」と思っている人を「過去否定理論者」と呼ぶことにする。
歳をとった多くの過去否定論者が「歳をとったら、風邪をひきやすくなった」とか「歳をとってつかれやすくなった」とか「歳をとったら、急に体調が悪くなることが多くなった」とかと……「普通に」……言うのである。
過去は現在の状態に関係があると思っているのである。
たとえば、ある過去否定論者が八〇歳だとする。その場合、約八〇年間生きてきたという過去がある。長い間生きてきたので、老化して、風邪をひきやすくなったと言うのである。
歳をとるということの影響を認めている。
過去が現在の状態に影響をあたえていると思っているのである。自分のことについては、この通り、過去は現在に影響をあたえていると思っているのである。普通に、過去について考えて、過去の影響について考えるのである。
ところが、ひこどことになると「過去は現在の状態に影響をあたえない」と言い始めるのである。おなじような表現に「過去はない」という言い方がある。
「過去はない」ということと「過去は現在の状態に影響をあたえない」ということは、まったくちがうことなのである。「過去はない」ということは「過去は現在の状態に影響をあたえない」こととはまったく、ちがう意味内容をもっているのである。
ところが、多くの過去否定論者が「過去は現在の状態に影響をあたえない」という意味で「過去はない」と言うのである。指摘すれば、「そんなのは、アバウトでいいんだ」と言いやがる。こんなやつらと、まともな議論なんてできるわけがないだろ。
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過去否定論者の多くが、エイリの身に起きたヘビメタ騒音の影響を認めないのである。「ヘビメタ騒音の影響なんてない」という意味で「過去は関係がない」と言うのである。「ヘビメタ騒音の影響なんてない」という意味で「過去はない」と言うのである。ヘビメタ騒音の影響なんてない」という意味で「過去は現在に影響をあたんない」と言うのである。……こいつら、ほんとうに、頭にくる。腹がたつ。
自分の身に起こったことに関しては、ちゃんと理解しているのである。過去の出来事が現在の状態に影響をあたえると思っているのである。自分のことであれば「こういうことがあったから、今現在こうだ」と普通に考えることができるのである。
過去否定論者も、自分のことに関しては、過去の出来事が現在の状態に影響をあたえていると思っているのである。ところが、ヘビメタ騒音に関しては、『影響はない』と言いきるのである。俺の身に起きたことに関しては、この通り、へんな確信を持ってしまうのである。