「過去否定論者」というのは、基本的に……自分が言っていることの意味がわかっていない。
過去否定論者が言いたいのは、「過去は現在に影響をあたえない」とか「過去の出来事は現在の状態に影響をあたえない」とかということではない。
ただ単に、「過去のことは気にしないようにする」ということなのだ。
だったら、「過去は現在に影響をあたえない」とか「過去の出来事は現在の状態に影響をあたえない」とかと言わなければいいのに、「過去は現在に影響をあたえない」とか「過去の出来事は現在の状態に影響をあたえない」とかと言ってしまう。
さらに、「過去はない」と言ってしまう。
これ、過去否定論者・本人も、どういう意味で「過去はない」と言っているのか、よくわかってないのだ。この人らは、格好をつけて「過去はない」と言っているだけで、自分が言っていることの意味がわかっていない。
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「未来はない」というのもおなじだ。「未来のことは気にしないようにする」という意味なのだ。「未来はない」ということと「未来のことは気にしないようにする」ということは、まったくちがうことなんだよ。
けど、それがわかっていない。
「未来はない」という言葉を「未来は存在しない」という意味で言っているとする。その場合、「未来は存在しない」ということが、どういうことなのか、言っている人自身が、よくわかっていないのだ。
だから、この人たちと、「時間」について話してもむだだ。
「過去はない。未来もない。今現在しかない」とか「今現在に集中すればいい」とかという言葉をだれがはやらせたのか、知らないけど、迷惑な話だ。
これ、相当にいい言葉だと思っている人たちが、いるみたいだけど、かなり高い確率で起こる出来事を気にしないというのは、あんまりいいことではないぞ。
起こることがわかっているのに、気にしないようにするなんて、おかしいじゃないか。
これ、「やくざの鉄砲玉」と似ているところがある。まあ、「やくざの鉄砲玉」の場合は、計画されたことだから、未来のことを考えている。しかし、出たとこ勝負みたいなところはある。鉄砲玉の役をやった人は、高確率で死んでしまうわけだから、……自分が死んだあとのことは……自分には関係がないということになる。
「とりあえず、集中して、やりきって、あとのことは知らない」ということだ。
「どんなことが起こっても、気にしない」という覚悟でやりきるということだ。
未来のことなんて気にしないのだから、そうなる。
「今現在に集中すればいい」という言葉の意味は、「将来どういうことが起こるのかということは、気にしないで、目の前のことをやればいい」という意味になる。
「未来はない」のだから、どうだっていいのだろう。
いやーー。一〇〇%の確率で、よくないことが起こるなら、気にしたほうがいいぞ。
九〇%の確率でも、気にしたほうがいい。
ともかく、高い確率で、よくないことが起こることがわかっているなら、気にしないよりも、気にしたほうがいい。
自分が「今現在」夢中になってやっていることが、将来の自分に悪い影響をあたえるなら、やらないほうがいい。
それから、まわりの人だっているんだからな。それを忘れるな。
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「未来はない」と言っているのに、自分がしあわせになりたいやつがいるんだよな。「未来はない」と言っているのに、「未来の自分がしあわせになったほうがいい」と思っているわけだ。とことん、矛盾している。
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「今現在しかない」と夢中になって、ある店の「こってりラーメン」を食べたとする。でっ、毎日それを繰り返したとする。期間の長さによるけど、一年以上続ければ、かなりの高確率で、糖尿病になると思う。
未来の自分のことは考えなくていいのか?
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「今現在に集中すればいい」という助言の場合、「どういうことに集中するのか」ということは、関係がないことになっている。
「いいことに集中するのだ」ということになっている。
「自分がいいと思うことに集中するのだ」ということになっている。
けど、いまはいいけど、繰り返しやると、将来の自分に悪い影響をあたえることだってある。
それから、自分はいいことだと思っているけど、まわりの人は、迷惑だと思っているかもしれない。
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「将来」のことは考えなくていいのだ。
どうしてかというと「今現在しかない」からだ。「未来はない」からだ。
ある意味、「今さえよければ、あとのことはどうでもいい」という考え方なのだ。
ある意味、「自分が目の前のことに夢中になっていれば、まわりの人のことなんてどうでもいい」という考え方なのだ。
「未来はない」「今現在しかない」のだから、破滅的な行為だって、「今現在に集中してやればいい」ということになってしまう。
「そんな、意味で、『未来はない』『今現在しかない』と言っているわけではない」と言うかもしれないけど、「そんな、意味」を含んでいる言い方になっているんだよ。
勝手に、「そんな意味は含まれていない」と考えるべきではない。
「そんな意味は含まれていない」と過去否定論者が言う場合は、「今現在に集中している時間」が毎日続くと思っているのだ。けっきょく、未来はあると思っているのだ。「未来はない」と言っているけど、未来があると思って、行動している。