体(からだ)ごと包まれる形で、あのひどい音を聞かされるということが、どういうことなのか、わかってない人たちばかりなのだ。
その人たちが「俺だって騒音ぐらいあった」と言う。ぜんぜん、ちがうのに、まったくわかってない。まーーーったく、わかってない。あの至近距離の音が、どれだけ、強烈かわかってないのである。
ほんとうに、振動がくる。固体振動だ。気が気じゃないのである。
だれに言っても、あの空間は、わからない。
「ちょっとうるさい」というレベルではないのだ。そして、ヘビメタの音が、ほんとうに、俺にあわないのだ。猛烈に、あわない音なんだよ。
学校で、俺みたいに、家族のヘビメタ騒音を聞かされている人はいなかった。きちがい兄貴が、きちがいだから、程度というものがわかってないのだ。自分が思いっきり鳴らしたかった、思いっきり鳴らした音が、しずかな音だと思ってしまうのだ。
こういうところに、きちがい的なずれがある。
だから、みんなわからない。みんな、誤解をする。誤解をする。
そして、ともかく、毎日続いたということが、ほかの人とぼくのちがいをうみだしている。みんな「たいしたことはない」「ヘビメタ騒音なんて関係ない」「過去は関係がない」と言うけど、みんな、わかってないやつらなのだ。
こんなことを言うわけがないだろ。おなじことをやられたやつが、こんなことを言うわけがない。やられてないから、言っているだけだ。ほんとうに、失礼なやつらだ。ほんとうに、ぶんなぐってやりたい。