Dさんは、Eさんが愚痴を言わなかったときに、突然「Eさんが愚痴を言って、自分が不機嫌になる」と言ったわけではないのだ。
言わなかったことが、現実化したのだ。
DさんはEさんと、親しく話をするような中になるまで、Eさんとは、あいさつするだけのなかだったのである。
だから、Eさんが、あいさつ代わりに、政治に関する自分の意見を突然、述べるということはなかった。
長く話をする仲になったから、Eさんが、自分の意見を述べるようになったのである。
Eさんが、政治について自分の意見を述べるまえに、Dさんが「Eさんが政治についてEさんの意見を述べるようになる」ということを予見して、「Eさんが、政治ついてEさんの意見の述べる」と言ったから、Eさんが(Dさんに)政治の意見を述べるようになったのかというとそうではないのだ。
つまり、「Eさんが、政治ついてEさんの意見の述べる」とDさんが言ったから、その言葉に宿る言霊の力によって、Eさんが政治についてEさんの意見を述べるようになったのではない。
Eさんは、「この政治家はけしからん」「この政治家は、こうするべきだ」という自分の意見を述べたのだ。どうして述べたかというと、Eさんがそう思ったからだ。
Eさんのなかでは、Eさんの意見をDさんに教えてあげるのは、有益なことだったのである。
言霊主義者は、言霊について知らない相手に、言霊的な解決方法をすすめることがある。言霊主義者にとっては、言霊理論を知らない人に、言霊理論に基づいた解決方法を説明してあげることは、いいことなのである。言霊主義者は、相手にとってその情報が、重要で有益だと思ったから、説明してあげたのだ。
それとおなじで、Eさんは、自分が政治に関して意見を言えば、Dさんが同意してくれると思っていたのだ。
しかし、Dさんにとっては、Eさんの意見は、行きすぎた「べき論」であって、興味がないものだった。Dさんは、Dさんで、政治にいて考えるところがあり、その考えは、Eさんの考えとは合致していなかったのである。
Eさんは、Dさんが同意してくれると思っていた……。Eさんは、思霊主義者でもあるので、『思いは現実化するはずだ』と思っていた。Eさんの……『Dさんが同意してくれる』という思いは、現実化しなかったのである。
『思いは現実化する』という言い方にも、一〇〇%詐欺が成り立っている。
「すべての思いは、一〇〇%の確率で現実化する」という文と、「思いは現実化する」という文は、意味的に等価なのだ。「思いは現実化する」という文と、「思いは、現実化する場合だってある」という文は、意味的に等価ではないのだ。
DさんもEさんも、精神世界の人で、言霊主義者で思霊主義者だ。「言ったことが、現実化する」ということと「思ったことが、現実化する」ということは、両立しないということには、気がつかない。
この二人が会って話しているときだって、「思い」は現実化していないし「言わなかったこと」が現実化しているのだ。Dさんは、すなくても、自分が言わなかったことが、現実化したということには、気がつかないとダメだ。
なんで、「自分が言わなかったことが現実化してしまったんだ」と、Dさんは不思議に思うべきなのだ。
だって、そうだろ。
「Eさんが、政治について不満を言う」とDさんが言わなかったのに「Eさんが、政治について不満を言った」のだ。
まさに、「言わなかったことが現実化した」のである。
「Eさんの話を聴いて、私は不愉快になる」とDさんは言わなかった。
ところが、実際にEさんと会って話をしていたら、Dさんは「Eさんの話を聴いて、不愉快になった」のである。
まさに、「言わなかったことが現実化した」のである。
なんで、言わなかったことが、現実化するんだよ?
言ったことが、言霊の力によって、現実化するんだろ。おかしいじゃないか。
「思いは現実化する」とか「言えば言ったことが現実化する」と熱心に言ってたって……言ってたって……現実は……こんなもの。げんじーーつはぁーーーーこんーーなぁーーもん。