言霊主義者は「言えば言ったことが現実化する」と言っているけど、「弱気がうつる」といったようなことを言う。言えば言ったことが現実化する……のだから、「弱気がうつる」なんてことは気にしなくていいのである。「弱気はうつらない」とひとこと言えばいいのである。あるいは、「自分は他人の影響をうけない」とひとこと言えばよいのである。それで、解決できる。なんで、弱気がうつることを気にするのか? 言霊の力を信用していないからだ。言霊の力を信用しているのであれば「弱気は、つうらない」「他人の弱気は、自分の気持ちに影響をあたえない」と言えば、それで、一件落着だ。問題を解決できる。なんで、他人の弱気が、自分に伝染することをおそれるのか?
「ネガティブが伝染する」ということについてもおなじだ。言えば言ったことが現実化する……のだから、「ネガティブが伝染する」なんてことは気にしなくていいのである。ネガティブが伝染する」というのは、「ネガティブな人といると、自分もネガティブな気持になる」ということだ。ネガティブな人というのは、何事にもネガティブな人でもいいし、たまたまネガティブな気分になっている人でもいい。ともかく、「ネガティブな人」のことだ。これも、じつは、相対性が成り立っていて、だれかが、だれかのことを「ネガティブな人」だと認識したにすぎないのだ。ほんとうに、だれかが「ネガティブな人」なのかどうかは、わからない。
また、DさんとEさんに登場してもらおう。たとえば、Dさんが、Eさんのことを「愚痴ばかり言うネガティブな人だ」と認識したとする。その場合、Dさんのなかでは、Eさんは「ネガティブな人」になるけど、実際に、Eさんがネガティブな人なのかどうかは、わからない。Eさんは、熱心に政治のことを考えて、熱心に政治批判をしている人なのかもしれない。Eさんは、ポジティブに政治批判をしている人だ」と積極的に評価する人にとっては、Eさんは、ポジティブな人なのである。Dさんが、Eさんの言っていることは、批判ばかりでネガティブだ」と評価しただけなのである。そのDさんが、「Eさんといると、ネガティブな気持がうつる」と思ったとする。Dさんは言霊主義者なのだから、「Eさんといると、楽しい気分になる」と言えば、楽しい気分になる人なのである。ところが、実際には「Eさんといると、ネガティブな気持がうつるので、Eさんとの付き合いを断とう」と思ったのである。ぜんぜん、言霊的な解決方法をためそうとしないのだ。
それから、これいってしまうと、おしまいなのだけど、ちょっとだけ、言っておこう。Eさんも、言霊主義者なのだから、政治について、「これはこうなる」と言えば、それだけで、問題を解決できるのである。「この政治家は、こうする」と言えば、「この政治家は、こうする」のだ。「この政策はこうなる」と言えば、「この政策は、こうなる」のだ。「これこれこういう法律ができあがる」と言えば、「これこれこういう法律ができあがる」のだ。言うだけで、自分が思った通りにすることができる。言霊主義者なのだから「言えば言ったことが現実化する」ということを信じているはずだ。言って、解決すればよいのである。
Dさんは、友人であるEさんが「これこれこういう法律が制定されるべきだ」と言っているのだから「これこれこういう法律が制定される」とひとこと言ってあげればいいのである。そうすれば、Dさんが言ったことが、現実化されるので、これこれこういう法律が制定される。実際に、制定される。時間制限をつけて「これこれこういう法律が、今日中に、制定される」と言えば、言霊の力によって、「これこれこういう法律が、今日中に、制定される」のである。だから、言うだけで問題解決できる。この場合の問題解決というのは、Eさんの考えていることが現実化されるということだ。Eさんの気持ちが満たされるわけだから、いいじゃないか。ところが、Dさんは、「Eさんといるとネガティブがうつる」などと思って、Eさんとの付き合いをたったのである。
DさんもEさんも、言霊主義者なのに、肝心なところでは、言霊的な解決方法をこころみもしない。